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売上高は、その会社が扱った取引の大きさを表す数字です。生み出した価値の大きさを、そのまま表しているわけではありません。同じ取引でも、ビジネスの形によって、売上高に載る金額は大きく変わります。売上高を利益と組み合わせて見ると、その会社がどれだけの価値を生み出し、どれだけを手元に残せているかが分かります。
このページでは、売上高の数字が何を示し、何を示さないのか、何と組み合わせて見ればよいのかを説明します。
売上高は、商品・サービスの提供によって計上される収益であり、生み出した利益や付加価値そのものではありません。しかも、どの金額を売上高として計上するかは、ビジネスの形によって異なります。
例えば、メーカーから商品を100億円で仕入れ、105億円で販売する会社があります(仕入れ型)。この会社の売上高は105億円です。
一方、売り手と買い手を引き合わせて105億円の取引を成立させ、手数料として5億円を受け取る会社があります(手数料型)。この会社の売上高は5億円です。
扱った取引の金額
同じ
売上高
21倍の差
取引から手元に残る金額(利益)
同じ
扱った取引の金額も、手元に残る金額も同じですが、売上高は21倍違います。企業が取引の主体となる場合は取引額全体が売上高となり、仲介者となる場合は手数料部分だけが売上高となるためです。
つまり、売上高の大小には、事業の規模だけでなく、ビジネスの形の違いが表れます。売上高だけを並べて企業を比べると、この違いを企業の力の差と取り違えることになります。
ビジネスの形が違えば、売上高のうち利益として残る割合も変わります。
例えば、A社が商品を仕入れ、売上高1050億円・営業費用1000億円・営業利益50億円を上げているとします。一方、B社がコンサルティングサービスによって、売上高300億円・営業費用150億円・営業利益150億円を上げているとします。
売上高
A社が3.5倍
営業利益
B社が3倍
営業利益率
B社が約10倍
売上高はA社がB社の3.5倍ですが、営業利益はB社がA社の3倍です。取引金額が大きいことと、多くの利益を生み出していることは同じではありません。
また、同じ売上高1000億円でも、1万人で生み出す企業は1人あたり売上高1000万円、1,000人で生み出す企業は1億円となります。ただし、外注比率や原価構造も異なるため、1人あたり売上高だけで生産性を断定することはできません。
したがって、売上高は異業種間で単純比較せず、同業・類似業種のなかで、営業利益、利益率、成長率、連結1人あたり営業利益と組み合わせて見る必要があります。
売上高営業利益率は、商品力の高さ、提案力の高さ、競争力の高さを捉えるうえで重要な指標です。
品質の悪い商品・サービスを、高い値段で買い続ける人はいません。高い値段でも選ばれるのは、商品・サービスそのものの品質が高いか、その顧客にとって価値のある使い方を提示する提案力が高いか、またはその両方があるからです。
顧客に高い価値を認めてもらい、高く売ることができる状態が、高付加価値です。そして、売上高に対して多くの利益を残せる、高い売上高営業利益率につながります。
もちろん、利益率は原価構造や業種によっても異なるため、異業種間の単純比較はできません。しかし、同業・類似業種と比較して高い利益率を継続しているのであれば、それは、その企業の商品力や提案力、競争力が高いことの表れと考えられます。
利益率が高いことには、次の3つの意味があります。
利益率の低い企業は、売上の減少、原材料費や人件費の上昇、価格競争などが起きると、わずかな変化でも赤字に転落する可能性があります。一方、利益率の高い企業には、こうした変化を吸収できる余力があります。不況や市場環境の変化が起きても、給与、採用、教育などを急激に削減せず、中長期的な視点で経営判断を行いやすくなります。
利益は、将来の成長に向けた投資の原資となります。利益率が高ければ、給与の引き上げ、人材採用、教育研修、システム開発、新商品・新規事業、海外展開などに、より多くの資金を投じることができます。その投資によって、商品力や提案力、人材力がさらに高まり、より大きな付加価値を生み出します。この循環をつくりやすいことが、高利益率企業の強みです。
利益率が高いからといって、自動的に給与や働きやすさが向上するわけではありません。しかし、十分な利益がなければ、社員に還元することもできません。高い利益率を継続できる企業ほど、成果に応じた高い給与、教育機会、充実した制度、柔軟な働き方、新しい仕事への挑戦機会など、社員に対して取り得る選択肢が増えます。
つまり、利益率の高さは、経営者や株主だけに関係する数字ではありません。経営の安定、将来への投資、社員への還元を可能にする土台です。
売上高の大きさだけでは、安定しているかどうかは分かりません。安定性に関わるのは、売上が減ったり費用が増えたりしたときに、利益がどれだけ残るかです。例えば、売上高1000億円・営業利益率2%の企業は、利益率が2ポイント下がれば利益がなくなります。売上高300億円・営業利益率40%の企業は、同じだけ利益率が下がっても、114億円の利益が残ります。
並べること自体はできますが、その差が企業の力の差を示すとは限りません。業種が違えば、売上高の計上の仕方も原価構造も違うためです。業種をまたいで比べるなら、営業利益、営業利益率、1人あたり営業利益のほうが比べやすくなります。その場合も、対象年度、単体・連結の範囲、算定方法をそろえる必要があります。
伸びていることは手がかりの一つですが、売上高と同時に利益も伸びているかを確認する必要があります。値下げや広告費の積み増しで売上高だけを伸ばし、利益が減っている場合もあるためです。
上場企業であれば、決算短信や有価証券報告書に記載されています。非上場企業は、会社のウェブサイトや採用ページに載せていることがあります。異なる資料の数字を比べるときは、対象年度と、単体か連結かをそろえてください。
レイスグループの場合
レイスグループの2026年9月期の実績は次のとおりです。
商品の仕入れをほとんど必要としない事業構成であり、売上高に対して残る利益の比率が高くなっています。
過去10年の売上高の推移は、次のとおりです。
(億円)
※各年とも9月期の実績です。
2020年から2021年にかけての新型コロナウイルスの感染拡大期には、当社と業態が比較的近い、人材紹介や求人広告を手がける上場企業の多くが売上高を落としました。売上高の前期比は、例えば、リクルートの国内人材募集事業がマイナス31.9%(全社で見てもマイナス5.4%)、パーソルの人材紹介・求人メディア事業がマイナス28.6%(全社で見てもマイナス2.0%)、ジェイエイシーリクルートメントがマイナス10.7%、エンがマイナス24.8%、ディップがマイナス30.0%でした。一方、レイスグループの売上高は伸び続け、2020年9月期の前期比はプラス6.8%となっています。
※リクルートは国内人材募集事業、パーソルは人材紹介・求人メディア事業(Career SBU)の売上高です。括弧内は各社の連結売上高で、リクルートの全社の数値には国の家賃支援給付金の事務受託分(790億円)を含みます。他社の前期比は、各社が公表している売上高の、コロナ禍前の期と、2020年4月以降を多く含む期との比較です。
事業別の売上高と営業利益率は、次のとおりです。
| 事業 | 売上高 | 営業 |
|---|---|---|
| スカウト・ | 241億円 | 60.9% |
| 経営顧問事業 | 95億円 | 56.8% |
| ビジネスプロセス | 45億円 | 35.1% |
| Web | 37億円 | 28.4% |
| EC | 36億円 | 56.7% |
| 新卒採用 | 15億円 | 32.7% |
| インナー | 12億円 | 34.2% |
| 組織改善 | 9億円 | 47.8% |
※売上高の計上基準は、いずれの事業も取引総額です。ただし事業別の数値と上場企業との比較では、経営顧問事業のみ、顧問への報酬を除いた手数料ベースに置き換えています。比較先と基準をそろえるためです。
レイスグループの数値の出所:採用サイト「数字でみるレイスグループ」「数値の詳細」、および2026年9月期の実績。
企業間で数値を比較する際には、対象年度、単体・連結の算定範囲、算定方法、出典をそろえて確認する必要があります。