「地元浜松で、経営者の助けとなる仕事がしたい」
浜松に生まれ、両祖父母が経営者という環境で育った。小学生の頃、リーマンショック(100年に1度とも形容される世界的な金融危機)の煽りを受け、両社ともに倒産に追い込まれた。
祖父母の会社は、いずれも1社の大口取引先に依存していた。大口取引には、大量生産によりコストダウンが図れたり、小口取引先への煩雑な個別対応から解放されるメリットがある一方で、品質や価格の要求に振り回されたり、その1社の動向に経営が左右されたりするデメリットもある。
リーマンショックの際、突然大口取引先から発注停止を通告され、経営は混迷を極めた。当時、多くの中小企業が淘汰されたが、祖父母の会社も奮闘虚しく、廃業を余儀なくされたのだった。
(解決策はあったはず……。同じように苦しむ経営者を救いたい)
幼少期のこの思いは消えることなく、就職活動中は「業種・業界を問わず、中小企業に対して経営課題の解決策を提案できる仕事」を求めていた。
メガバンク、外資系投資銀行、日系コンサルなど、様々な企業の選考を受け、数社の内定を獲得した。しかし、どの内定先にももの足りなさを感じていた。
(銀行の支援領域は融資が主であり限定的。コンサル企業もアドバイスこそ行えども、結局経営課題を解決できるか否かは経営者任せの状態。もっと直接的に課題解決を支援できる環境はないものか……)
そんな折、とある企業が目に留まる。
『経営者に対し、課題の解決策を提示するだけでなく、日本経済を牽引してきた大手企業の取締役や役員とともに、”解決策の実行”まで一貫して支援する』
(これだ……自分がやりたい仕事は……!)
こうしてレイスグループと出合い、入社を決断した。
入社した2018年当時、浜松にレイスグループの支店はなかったが、「いち早く実力をつけ、支店長として必ずや浜松支店を立ち上げてみせる!」と心に誓った。配属直後こそ、順調に見えたが、2年目を迎えた頃から、受注件数はクォーター5件程度で成績は行き詰まっていた。
自身が目指す「支店長」とは、プレイングマネージャーとして担当エリアの経営者に価値を提供しながら、10名以上のメンバーを統率することが求められる立場である。率先垂範しメンバーを鼓舞するためにも、クォーターで10件程度の受注件数が必要だ。
(このままでは、支店長になるどころか、最低限の成果が出せるかさえ危うい……)
焦りの気持ちも空回りしてか、新規契約どころかクレームをいただく場面も増えてしまった。一方、配属直後は自分よりも成果が出ていなかった同期が、先に昇格していく。いつしか仲間の活躍にも目を逸らすようになっていた。
2年目の後半には、入社当初の思いには蓋をして、ただただ目先の業務に明け暮れる日々が続いた。
そんなある日、上司から声をかけられた。
「一緒に富山(支店)に行かないか?」
突然の誘いだった。
富山には縁もゆかりもない。だが、暗中模索の毎日から脱するべく、大胆に環境を変える必要性も感じていた。
「行きます!」
その場で富山支店への異動を即決した。
富山は、都心部と比べて企業数は少ない。新規契約を獲得するうえで不安はあったが、実際に経営者の元を訪れると、意外な発見があった。
「実は近々大きなプロジェクトが控えていて、今のうちに工場の生産設備を整えたいんだ。」
「うちはとあるA社に取引を依存しているんだ。でも本当は他社への販路も広げたくてね……。」
「地元の学生を採用したいが、少子化が進み、採用がどんどん困難になっているんだ。」
「離職率が想定以上に高止まりしている。人事評価・育成のために制度を整えたいんだが、自社に最適な制度がどのようなものか、わからないんだ。」
「新商品をネット通販で販売すべく、権利関係について調べているんだが、どうも分からない。随分時間を使ってしまったよ……。」
経営者からは、堰を切ったように課題や悩みが溢れてくる。
(地方ゆえ、レイスグループのような経営者のパートナーとなる企業は少なく、解決手段を待ちわびているのか……)
自分の中で、かつての夢がふつふつと蘇るのを感じていた。
(自分は何のためにレイスグループの門を叩いたのか……。やはり地元浜松で経営者の助けとなりたい。浜松を盛り上げ、浜松の地で活躍する姿を祖父母たちにも見せたい)
富山に来てから3年。
かつての志を取り戻し、成果は右肩上がりに伸びていった。
新型コロナウイルスの流行も収束の兆しが見え始めていた2022年7月。レイスグループの今後の事業計画の一部として支店展開の方針が発表された。
「今後、支店展開を加速させます。腕に自信のあるメンバーは、ぜひ支店長に立候補してください。」
迷いはなかった。
「浜松への支店の新設を希望します。そして、その支店長に立候補します。」
居並ぶ支店長と比較すると、マネジメント経験も実績も不足していただろう。
しかし、富山支店での貢献と、「地元浜松の経営者の役に立ちたい」という熱意の強さから、今後への期待も込めて、浜松支店長へと大抜擢された。
浜松支店の立ち上げから1年半。
自身とは異なる商材を担当するメンバーへの指導や、これまでの2倍の数のメンバーのマネジメントなど、管掌範囲が大きく広がったことによる苦労も乗り越え、順調に浜松の顧客への支援を広げている。8名だった浜松支店のメンバーは15名まで増加した。
鉄道や百貨店などの事業を展開する地元の優良・大手企業も顧客として開拓し、
自身の夢の実現に向けて確かな手応えを感じている。
「地元の活性化のためにはここからがスタートです。ひとりでも多くの経営者のお役に立ち、もっと地元を盛り上げたいと思っています。」
地元浜松の顧客にロマンを届けるべく、今日も経営者のもとを訪れる。